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| 不思議な蝉の話 | |
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不思議な蝉に出会ったお話です。わたしが偶然助けた蝉が不思議なことを したという事です。離婚する前の出来事です。その頃は月に一度くらい友人たち と「夜遊び」に出かけていました。夜遊びといってもたいていは映画鑑賞して、 その後は喫茶店で閉店まで茶話会をして解散といった他愛のないものでした。 わたしがいつも歓楽街を通過して、夜道を散歩しながら帰宅するのは夜中の 一時近い時間でした。まだタンタンには今ほど悲惨な行動障害が現われて いない頃でした。いつものようにご機嫌で(飲んでいませんっ!)帰宅しました。 マンションの入り口付近に来たとき、電灯の直ぐ下で何かがもそもそと蠢いて いたのです。白く煌々と照らされている地面の上をかがんで覗き込みました。 蝉の幼虫・・が這っていたのです。子どもの頃、蝉の幼虫を初めて見た わたしは息が止まるかと思うほど驚いたものです。 そしてその場で確信しました。「恐竜のコドモに違いないっ!」そうではないのだ、 と知ったときは非常に落胆しました。最初の驚きを上回るほどに・・・。 ですが今はもちろんこれが蝉の幼虫ということは知っていますから、子どもの 頃に信じた思いを懐かしく思い出しているのです。 きっと夕方に地面から這い出してきたのでしょう。でも、なぜ?こんなに明るい 照明の下でころんと転がっているのか分りません。しかもコンクリートの上です、 人目に付く場所です。もう少し歩いていけば暗がりの茂みも木もあるのに・・。 わたしは幼虫をつまみ上げると大急ぎで通りの向こう側まで走りました。 目の前は大きな庭に、大きな木が何本かあるお屋敷があります。門から建物 までは距離があることもあり、少し入ったところにあるクスノキに蝉の幼虫を 預けておいたのです。 ![]() ここなら暗いし、人も来ないし朝までまだ充分時間があるから・・・頑張ってね! 運がいいぞっ、キミはぁ、善き人に出逢えてさ!」そしてこの出来事は翌日には すっかり忘れていました。 (人に良い事をした後はすぐに忘れてしまいましょう。親切にされたことだけは 忘れずに感謝をするのが幸せのこつだそうです。) 一週間後の朝のことです。コーヒーを入れようと、お湯を沸かしていました。 ヤカンのピーピーと沸騰を知らせる音と競うようにジージージージーっ・・・。 蝉が大声で鳴いているのです。こんな朝早くからもう鳴くの?張り切って いるのだなぁ・・・蝉はさ・・。ですが不自然なほど近くで鳴いています。 玄関ドアの直ぐ上!とっさに思いました。なぜ?こんなところで鳴くの?しかも ますます声は大きくなります。わたしはなぜか胸がどきどき、ワクワクとしてきた のです。ジージーじぃーっ!!! ドアを勢い良く開けました。まさしく玄関ドアのすぐ上に止まっている蝉を確認 するや、あの蝉がジュジュッ!と飛び去りました。「アリガト・・サヨナラ・・。」 と聞こえたのです、わたしには。夫に「不思議な蝉の話」をしよう とふと思いました。でも、やめておきました。 蝉の命が一週間で、とても短いのだと人間は感じるのでしょう。でも蝉には 充実した長い一生なのです。人間の一生が長いと感じるほどに。それは更に 儚い命と思われるウスバカゲロウにしても同様です。 あの蝉がわたしにお別れの挨拶に来てくれた時はびっくりしました。 それは嬉しい驚きです。日々の中に驚きをプレゼントされることほど嬉しい ことはありません。自然における人間と生きものを結ぶこれらの出来事が 生命の進化を助けてくれます。 |
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